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注目のヒト

― ロングインタビュー ―

情報の集め方・活かし方 ―そして、電子書籍とどう付き合う?―

LONG INTERVIEW #05 京極夏彦×小林涼子

2011.10.20

[TIPS1]読む度に新しい発見! 読書は一生楽しめる宝箱。

「映画やアニメ、ドラマを観て発見することが、創作にもつながっていく。どんなことも大事にした方いいですね。」

―――京極さん、小林さん、本日はありがとうございます。まずはお二人の本との関わり方についてお聞かせください。

京極 僕はだいたいいくつかのことを並行して行ってるんですが、読書だけは別です。本に失礼な気がするんです。できるだけ一生懸命読む。そうしないと読み取れない気がして。
小林 わかります。私も夜、無性に本が読みたくなって気がつくと朝になっているパターンが多くて。すごく時間がかかっても何が書いてあるのかじっくり考えながら、集中して読みます。
京極 正しい読書をしてますねぇ(笑)。難しい本を読むと眠くなるというのははおかしいですよね。理解しようとするなら、逆に目が冴えちゃいますよ。僕は、この世に面白くない本はないと思っています。どんな本でも、繰り返し読むなら、面白い部分はあるし、必ず何か心にひっかかるものが出てくるものです。
小林 死ぬまで面白いか面白くないかはわからないものなのかも。
京極 子供のころ見た映画やアニメを大人になってから見直してみると、全く違う面白さを発見することがあるでしょう。本の楽しみ方も、年を重ねると変わってくるもんです。幼い頃って、実生活の時間の流れがゆっくりだから、冒険物語を読んで、本の中であっという間に一夏過ごしちゃう...みたいな時間の経過に感動したりしていたわけだけど、大人になると逆。ゆったり流れる本の中の時間の流れ方が心地よかったりする。それがまた面白いんじゃないかな。

―――どうやって読む本を選んでいますか?

小林 フィーリングです。触れたくなって読んでみると、結果的にその時の気分に合っているものと出会えていますね。
京極 一目惚れって意外と当たるんですよ。本も人も一緒ですね。

[TIPS2]手を離れたら受け手の〝好きにして〟(笑)。

「演じている時と仕上がりが違うなと思うこともあるけど、それはそれ。仕事でも人生でも、常にあることなんだなと。」

―――〝表現すること〟について、お二人は何か意識されています?

京極 僕は、仕事としてやってますねぇ(笑)。
小林 わぁ、大人だぁ(笑)。
京極 おじいさんです。役者さんて、声や表情、身体そのもので表現しますよね。小説家は、ただ字を書くだけですからね。読み手を喜ばせたり怒らせたりするために、字を並べていく作業をしてるだけですね。
小林 これ(本)って、すべて京極さんの頭の中なんですか?
京極 僕はメモが大嫌いなんです。でも、書きながら考えるのもダメなんです。だから全部作って、忘れないうちに書く。妙に意識しちゃうと忘れるから(笑)いつもDVDを観ながら書いてます。
小林 すごーい!!ながら書きじゃないですか。
京極 読む時と大違い。今朝も仕事をしながら偶然『必殺仕事人2009』を観てたら小林さん死んでましたねぇ(笑)。2回も殴られたでしょ。ヒドいですね。
小林 そうです!よくご覧になってますね。それにしても、テレビを見ながら書かれているとは!?
京極 漢字が多いとか少ないとか、字の並び方には神経使いますけど。不思議なことに同じテキストでも、1段組と2段組の版形では読むスピードが違うんですね。同じフレーズなのに。今回は『ルー=ガルー2』を一度に4形態出版したので、版形によってテキストの修正をする作業を同時に複数回することになって、より違いが分かりましたね。内容よりも、僕はどう集中して読んでもらえるかに注力しているかもしれない。

―――内容はすでにもう、出来上がっているんですものね。

京極 そう。あとは皆さんが〝好きにして〟って感じです。作者がメッセージを出しすぎると、逆に読み手には届かないですよ。
小林 私の演技を見て誰かが何かを感じてくれれば、あとはどう受け取られてもいい。そういう意味では私も京極さんと同じです。

[TIPS3]電子書籍と「本」は別メディア。可能性はこれから。

京極「電子書籍には終わりがない。テキストが定着せず常に動いているものなんですよね。」
小林「そうか。本とは別物なんですね。」

―――今回『ルー=ガルー2』を電子書籍でも出されていますね。

京極 そうなんです。小林さんは、電子書籍ってよく読みます?
小林 正直、まだ不慣れですね。子供の頃、読んだ本の厚さそのもの=達成感の大きさだった、その感覚がまだ残っていて。
京極 読者に違和感を感じさせてるのは、作り手側の意識の低さななんでしょうね。そもそも、「本」も「書籍」も、やはり紙なんですよ。質量のない電子書籍はまるっきり別のメディアのはず。なのに、今はまだ、本の真似っこをしている、タブレット端末で読む電子ならではの美味しさがどこにあるのか、模索している段階ですからね。
小林 発展して便利になって、だんだん慣れていく予感がします。
京極 電子ならではの良さは必ずある。紙に近づけようとしたって絶対に本家には敵いません。むしろ違うところを追究していかなくては、要らない子になっちゃいます。そこを見つけられればもっと面白くなっていくでしょうけどね。

[TIPS4]コミュニケーションは、時代で変わっていく。

「もっとすごいメディアが出てくるかもしれないしね。方法は変わっても、人の関係性はきっと変わらないと思う。」

小林 『ルー=ガルー2』は私、まさに今これ!の出会いでした。
京極 おや! 本当ですか。ありがとうございます。
小林 子供でも大人でもない中途半端さを気持ち悪く感じていたので、そっと手を引っ張ってもらった本です。信じられるか信じられないかではなく、信じたいか信じたくないかなんだっていう、以前のシンプルな自分に戻れたというか。
京極 嬉しいですね。小林さん、良い読者ですねえ。

―――10年前に30年先の話を書かれて、時代が追いついてきた感がありますけれど、2作目を書かれていかがでしたか?

京極 かなり近づいちゃいましたね。でも10年前にシリーズ全体の構想はできてて、いまさら変えることもできないし、まだ追い越されてはいないからいいかと。でも、一作目を書いたころには、ゴスロリなんて言葉はなかったので、説明を一生懸命書いたんだけど、これ、今で言うゴスロリじゃん!一言で済むじゃんと。
小林 何か惹かれたんですかね。そういう存在に。

―――本作は主役の女の子達の関係性が変容していく様も面白いですよね。最近の人と人とのつながりについては、どう感じられていますか?

京極 文字を使ったつながりでいえば、メールやブログを日常的に使っている今の人たちの方が、昔よりよっぽど文章に触れているから、コミュニケーション能力はあがっていると思いますよ。僕らの頃なんて、一部の人間がせっせと手紙を書いていたぐらいだから。
小林 私が思うのは、遠く離れていても気軽にコミュニケーションが取りやすくなったなって。コミュニケーションが希薄になったとは思わないけれど、いつでもつながることができるから、逆に重要なことを伝えることが難しくなっている気がします。本当は会った時に伝えなきゃいけないことを、メールで済ませちゃったり...。
京極 言葉の軽さと重さが変わっちゃったというのはあるかもね。
小林 人とのつながりが希薄になったわけではないんですよね。 

[TIPS5]ピッと惹き合ったら正解。「出会い」は大切。

「出会ってしまう本がありますね。人から薦められる本は苦手かも。読みたい本を読むからほっておいてって(笑)。」

―――最後に「本」とは、お二人にとってなんでしょうか?

小林 今回改めて、本て、悩んでいる時に背中を押してくれたり、逆に、立ち止まらせてくれたりする存在なんだなと思いました。
京極 興味ないなと思っても、どんなに面白くなかったとしても、繰り返し読むといつかそれが面白くなる。自分から合わせていくほうが、楽しみが多くなります。食べ物だって、好き嫌いはないほうが美味しいものを食べる楽しみは増えますからね。
小林 好き嫌いなく付き合うことで、思いがけない新しい自分の領域を見つけることができるかもしれないですしね。
京極 僕は、幼児の頃から何ら変わってないんですよ、根本的なところは。ただ、出会った本の数だけ別の人生があるという錯覚を持てるから、もっと本を読みたいですね。小説さえ書かなければもっと読めるんだけど...(笑)。
小林 京極さんには、本を書いていただかないと、私みたいな読者が読めなくなるから困りますよ(笑)。

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PROFILE

  • 撮影:塔下智士
  • 京極 夏彦

  • きょうごく なつひこ
  • 1963年3月26日北海道生まれ。小説家。アートディレクターとしてデザイン、装丁も手がける。世界妖怪協会・世界妖怪会議評議員、関東水木会会員。怪談之怪発起人。古典遊戯研究会紙舞会員。全日本妖怪推進委員会肝煎。1994年に『姑穫烏の夏』でデビュー以後、数々の文学賞を受賞。2004年に『後巷説百物語』で第130回直木賞、2011年には『西巷説百物語』で第24回柴田錬三郎賞を受賞。この10月『ルー=ガルー2 インクブス×スクブス 相容れぬ夢魔』を単行本、ノベルス、分冊文庫、電子書籍の4形態同時発売。出版史上初の試みが、話題を呼んでいる。

PROFILE

  • 小林 涼子

  • こばやし りょうこ
  • 1989年11月8日東京都生まれ。女優。特技はクラシックバレエ。趣味は吹きガラス、料理、カメラ。08年度第12回日刊スポーツドラマグランプリ 夏ドラマ「助演女優賞」1位。テレビナビ(扶桑社)ドラマ・オブ・ザ・イヤー2008. 7~8月期ドラマ「助演女優賞」1位。第43回ザ・テレビジョンドラマアカデミー賞「新人俳優賞」を受賞するなど、映画やドラマなど活躍の場は広く、その演技力は高く評価されている。10月よりNHKワンセグ2のドラマ『野田ともうします。シーズン2』がスタート。重松さん役で出演している。

BOOK

「ルー=ガルー2
インクブス×スクブス
<相容れぬ夢魔>」

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